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最高裁で再審開始をアピール

6・1ビラまき報告

福田 勇人


通行人にビラを配る小川央弁護士 袴田ひで子さん(左)と岡島順治弁護士

 晴天に恵まれた2006年6月1日木曜日、袴田巌さんの早期再審開始を訴えるため、弁護団と支援者は、袴田さんの姉・ひで子さんとともに最高裁西門前でビラまきを行なった。この活動は、弁護団の岡島弁護士の発案に「清水・静岡救援会」と東京の「求める会」が賛同して実現したもので、弁護団からは他に小川央弁護士が駆けつけ、支援者8名と合わせ総勢11名で、8時半からの1時間あまり、主に出勤途中の最高裁職員にビラを手渡した。
 当日は同じ場所で行なわれた旧国鉄職員による解雇撤回闘争、いわゆる「JR採用差別事件」関係者の要請行動と重なり、こちらのビラまきに影響が出るかと懸念されたが、最高裁に公正な判断を求めるという双方に共通した目的のお陰でそんな心配は杞憂に終わった。こちらのビラを一緒に配布してもらった上に、「JR」側の街宣車のマイクまで利用させてもらい交互にアピールするなど、問題が起きるどころか大いに助けられ効果的にビラまきを実施でき、そのためかビラを受取ってくれる率も高かったように思う。
 また「JR」関係者から、裁判所に対する支援者の直接行動についてアドバイスをもらえたことも思わぬ収穫だった。そのアドバイスとは、「上申書」あるいは「要請書」の類を直接裁判所に提出することで、調査官には面会できないまでも事務官に直に会って話を聞いてもらうことは可能だから積極的にやってはどうかというもので、これまでの袴田さんへの支援活動では全く行なわれてこなかった手段らしく、早速具体化していくことになった(書類の書き方などは20ページを参照)。
 これに関連して、『週刊金曜日』6月16日号の投書欄に「狭山事件」の支援者による「8年越しの要望「検事との面談」が実現」という一文が掲載されていたので紹介したい。この支援者が所属する団体は、裁判所や検察庁に対し事実調べや証拠開示の要請行動を長年行なっており、検察庁には8年ほど前から要請を繰り返し、今回24回目にして初めて担当検事との「直接面談」が実現したとのことである。
 その支援者は「それで何かが変わったわけではない。しかし、物事は一朝一夕にはならず、コツコツ積み上げていくことでしか変らない」と書いている。この言葉は、この種の運動に関わっている者にとって共通の認識ではあるけれども、その地道な積み上げの難しさは誰しも一度は感じたことがあるはずだ。再審開始を勝ち取ることの困難さは、新約聖書のマタイ伝の言葉を引いて「ラクダが針の穴を通るほうが易しい」などと喩えられるが、巨大なダムの決壊も針で開けたほどの小さな穴から生じるとの喩えもある。やれることは何でもやっていくべきだし、針の一穴が社会をより良い方向に変える力を持っていると信じ行動することが、市民社会に生きる個人としての不可欠な心構えと態度であろう。そしてそれなくして袴田さんの再審開始を勝ち取ることなど夢物語に過ぎず、真の司法改革もいつまで経っても望めはしない。この日配った一枚のビラが、司法権力の牙城である最高裁の冷たく厳めしい壁を突き崩す針の一穴になることを願ってやまない。
 ところで、このビラまきにはひで子さんが参加したこともあり、その様子をテレビ局が取材した。SBS静岡放送と静岡朝日テレビの2社である。前者は当日の『SBSテレビ夕刊』で報道し、同時に同社のウェブサイトで動画配信した。後者も6月21日夕方の『あさひテレビニュース』で「袴田事件 発生から40年」と題した特集を組み、6月19日に行われた後楽園ホールでの支援アピールの模様と合わた後楽園ホールでの支援アピールの模様と合わせて報道した(詳細は○ページ参照)。事件発生から40年の節目を迎えただけにこのところマスコミの取材は確実に増えている。厳しい言い方をすれば、彼らには事件当時警察からの情報を垂れ流し、袴田さんを犯人視したことで裁判所が死刑判決を下しやすい世論を作り上げた重い"罪"があるのだから、かつて日本テレビが行なったようにこの事件の不当性・冤罪性を訴える報道を今後増やしてもらいたい。
 恐らく、死刑宣告を受けた後キリスト者になった袴田さんは、絶望のどん底にあっても彼らに対し何度となく次の言葉を発し続けたのではなかろうか。彼ら自身のためにも、獄中で無言の抵抗を続ける袴田さんへの"贖罪"を是非とも果して欲しいと思う。
 ――あなた達は地の塩である。世の腐敗をふせぐのが役目である――『新約聖書 福音書』(塚本虎二訳・岩波文庫)マタイ福音書・第5章13節より■



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